その言葉  (1600Hitキリリク・お題「誕生日」)




 大きな木の下にキノとエルメスが佇んでいる。

「キノ、聞きたいんだけどさ」

 エルメスが言った。

「何?」
「キノの誕生日って…いつだっけ?」

 
 キノがきれいな青と白い空と頭上にある木の葉を見上げていたが、

 エルメスの方へと顔を下げた。

「ボクの?」
「そう」
「エルメスは知らないんだっけ?」

 キノが笑顔を作った。

「多分ねー」

 キノがエルメスをじっと見た後、また空を見上げた。


「へぇ…教えない」
「はい!!?」

 葉や草のこすれる音の中でエルメスは声をあげた。

「教えないって何?」

 キノがかぶっている帽子のつばを持ち、帽子をかぶりなおした。

「エルメスがボクの誕生日なんか知らなくてもいいんじゃない?」
「えぇー、でもここは相棒としてさ」
「あはは、そっか。相棒だね」



 キノとそんな会話をしたんだけれど、結局キノは教えてくれなかったんだ…。

 怒った…んじゃなさそうだった。

 自分の誕生日言いにくかったのかな?

 …何でも話してくれる僕になりたいな、と少し思った…。

 キノの誕生日…。

 人間には色々とあるものだもんね。

 モトラドの僕にも色々と事情や思いがあるように…。


 でも、僕は何故かその言葉を言いたくなった、そういう言い方をしたのは今の気持ちを隠したいからかもしれない

 …けれど、いたずらっぽく言ってみた。



「キノ、誕生日おめでとぉっ!」


「…え」


 二人が佇む大きな木には、ピンク色の花がもうすぐ咲きますよ、とでもいうように大きく膨らんだつぼみをつけていた。

 キノが目を丸くした。




 END










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作者・くろやずみサンのコメント

こんなモンですみません(汗)
というか暗いですね、誕生日ネタなはずですのに。
申し訳ない気分です。
誕生日ネタに再チャレンジしたいです。


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いえいえ、とんでもないです!
キノにとっての誕生日は色々複雑な想いが重なる日になるんですよね…。
キリリク答えて下さり、ありがとうございました♪
ずみサンのサイトはLINKより行くことができますので、是非☆

*華瑠波*