ふいに重くなった右肩。
隣で眠るのは一つ年上の先輩・・・・





■ 03.肩書きは後輩 ■




ガタタン。
ゴトトン。


単調な音を立てながら、電車はレールの上を走ってゆく。
帰宅ラッシュを少し外れた時間帯。
それに加えて座席を確保するために乗り込んだのは普通電車。
車内は空席の方が多かった。


はぁぁー・・・・


鳳は深い溜め息をつくと、右肩を動かさないように気を付けて、ゴツンと窓に頭をつけた。


ガタタン。
ゴトトン。


電車の振動が、直接伝わる。


「覚悟はしてたけど・・・・想像以上に辛いな」


ポツリと呟いて、視線を右下へ向ける。
自分の肩に頭を乗せて、眠っているのは一つ年上の先輩。

目の上には真新しい絆創膏。
口元は切れて赤く腫れている。
顔に限らず、擦り傷や青痣がいたる所にあった・・・・。


宍戸に対する気持が、ただの憧れや尊敬じゃないことに気付いたのは、つい最近。
もっと、それ以上で深い想い。


気付いてしまった気持ちにブレーキはかけられず、それどころか加速の一途を辿る。


好き。
好き。
好き。


今もこうして、無防備に隣で寝顔を見せられると、胸の奥がギュッと締め付けられる。


はぁぁー・・・・


前に向き直ってから、もう一度、溜め息をつく。

気持ちを伝えるつもりは・・・・ない。
ましてや今は正レギュラー復帰をかけての、猛特訓中だ。
余計なことで宍戸を困惑させるのは避けたい。
それに、もし気持ちを伝えたところで、宍戸が応えてくれる可能性なんて・・・・


「ないだろ」


フッと笑う。
人前では決して見せることのない、自嘲的な笑み。


今はただ、物分かりいい素直な後輩でいよう。

肩に預けられた僅かな温もりと、触れる長い髪に幸せを感じながら。










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チョタ、完全に片想い期間中のお話。
このチョタは現実を視野に入れて、理性を保ってますね…。
…ってか、ちょっと黒い?
でも、私の中のチョタは思い込んだら深く考えず、一直線に暴走するアホの子が理想だっ たりします(笑)

(2005.9.22)

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